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第11回 抗糖化生活は継続が大切

BTYゼネラリスト
寺山 イク子氏

 
脳の栄養はブドウ糖?!

 「抗糖化生活」を日々、上手に実践されている皆さんでも「脳の栄養はブドウ糖」という説をよく耳にしたことはありませんか?糖質の一種であるブドウ糖(グルコース)は脳の大切な栄養源、「糖がなければ脳に栄養が供給されず、脳が働かなくなるのではないか?」と。脳は安静にしていても1日120gのブドウ糖を消費する驚くべき大食いの臓器。しかも少量しかブドウ糖を蓄積することができないので、常にエネルギーを補給しなければなりません。そういう意味では砂糖は、ご飯やパンなどの成分であるデンプンと比較すると構造が簡単で、消化吸収が速く、すぐにエネルギーになります。しかしながら砂糖のように分解の工程が少ないものは急激に血糖値をあげることになってしまい、抗糖化生活には不向きですね。
 体内に取り込まれたブドウ糖は、まず血液の中に入ります(血糖値の上昇)。その後、脳へ送り込まれ消費されます。脳ではこのブドウ糖を保管できず、消費し続けます。その量はなんと1時間に5g!角砂糖1個(3~4g)よりも多い量が消費されている事になります。
 ではブドウ糖が少ない場合、身体はどう反応するのでしょうか?

糖新生とケトン体

 人の体にとって最もエネルギー源としやすいのが糖質であり、体の中に糖質があれば優先的に糖質を消費します。が、糖質が無い場合は「糖新生」によってタンパク質などからブドウ糖を作る事ができます。
 糖新生とは、タンパク質の中にあるアミノ酸を分解してブドウ糖を作ることです。つまり筋肉などに含まれるタンパク質を消費して、脳にとって貴重なエネルギー源であるブドウ糖を産生するわけです。
 さらにアミノ酸や脂肪をベースに「ケトン体」というエネルギー源を作る事もできます。「ケトン体」は脳を含め一部の臓器で消費可能な良質なエネルギー源で、身体は糖質不足の時にケトン体を緊急時の代替エネルギーとして活用できるようになっています。ケトン体はタンパク質に含まれるアミノ酸の一部や脂肪に含まれる脂肪酸を分解する事によって作られるため、糖質の補給が少し滞っても脳は代謝を維持することができます。

ブドウ糖とケトン体のメリット/デメリット

 それではブドウ糖とケトン体、それぞれの脳に対する働きをみてみましょう。ブドウ糖のメリットは、なんといってもすぐに栄養になるところ。常にエネルギーを消費し続ける脳の素早い栄養となります。糖新生やケトン体の活用によるエネルギー供給はそれほど効率の良いものではありません。糖質が良質なエネルギーである以上、脳をフルパワーで働かせたい時や激しい運動をする場合には炭水化物の方がパフォーマンス向上なのは当然です。しかし、スポーツ選手や肉体労働者のように激しい運動を習慣的に行わない多くの現代人にとっては、糖質を過剰に摂取することでむしろ弊害が引き起こされるかもしれません。炭水化物は体の中に蓄えておける量が「タンパク質」や「脂質」に比べて極めて少なく大量に蓄えられないので、脳や体を使う前に定期的に供給されることが望ましいのですが、過剰摂取の場合、糖質の一部は肝臓に蓄えられるものの、消費しないと脂肪に置き換わってしまいます。このような状況が続くと肥満がもたらされ、その結果、インスリンの働きが阻害されて高血糖が生じてきます。そして高血糖は生体内タンパクを糖化し、様々な疾患を誘発します。
 一方、糖質の摂取量を絞り、ケトン体の産生を促すような食習慣を続けると短期的には体重が減り、血糖値の急激な上昇を抑えることができます。ただし、長期にわたりこのような食事を続けた場合の効果や安全性については、まだ、明らかでない点が多くあります。さらに、糖質を抑えた食事により体が酸性に傾き、吐き気やめまいなどを引き起こす「ケトアシドーシス」に陥る場合もあることが報告されています。

グルテンフリーと糖質制限

 ところで最近、よく聞くようになったグルテンですが、糖質制限とグルテンフリー、ゴッチャになっている方、多くないですか?
 グルテンは小麦に入っているたんぱく質。
 グルテン(グリアジン)はアレルギー反応を引き起こし、腸粘膜を傷つける場合があることが指摘されています。例えば下痢や便秘、メンタル面の低下、慢性疲労、PMS(生理前緊張症)など。
 一方、糖質制限は精製された小麦粉や砂糖、白米、野菜などに含まれる糖質を制限し血糖値の上昇を避ける食療法の一つです。血糖値が上がらなければ肥満ホルモンであるインスリンが出ない= 内臓脂肪や体脂肪を燃焼するという説です。

低糖質による身体への影響は?

 今まで炭水化物で良質なエネルギーを得られていたところを突然肉食的な生活になって大丈夫なのでしょうか。まず負荷のかかる体の器官が変化します。
 血糖値が上がりにくくなるので、インスリンを分泌する膵臓に負担がかからなくなり、肥満や食後の血糖値の上昇を予防できるかもしれません。その一方で、タンパク質を過剰に摂るようになるため、老廃物を排出する腎臓に負担がかかります。また、脂質の過剰摂取、とりわけ、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、動脈硬化を進展させ、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを上昇させる可能性もあります。さらに、動物性の脂肪やタンパク質の摂りすぎは、癌の発症を促進させるかもしれません。

糖質制限は医療費を確実に減らせる?

 少なくとも世界保健機関(WHO)は1日の遊離糖類(単糖類と二糖類)の摂取量を25g以下にすべきだというガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を2014年3月に発表しました。糖質摂取を減らさないと肥満や糖尿病の増加は食い止められないというWHOの焦りを感じるような指針です。医学が進んでいるのに病人や医療費が増え続けている事実は、治療よりも予防に力を注ぐ必要性を示唆しています。国の医療費を減らすことを真剣に考えるのであれば、糖質の摂取を減らすことをもっと啓蒙すべきというドクターもいます。それは、一つの考えとして、私は、長期にわたって健康を維持する上では、むしろバランス感覚が大切なのではないかと思っています。
 ここ160年間で世界の平均寿命は40歳伸びました。我々が伝統的に摂っていた食事、日常的に行っていた活動が、医学の進歩とともに我々の健康に寄与してきたことはまぎれもない事実だと思います。今一度、健康的な食事の意味合いを考えていきたいと思っています。

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