教えて!AGEのこと

第12回 ドーナツがシミの原因!?

AGE測定推進協会
勇 史行 研究員

 

 「甘いものが好きな人はシミが多い!?」と、聞いたことがありますか?

 実際には、甘いものが好きな人と、そうでない人を集めて、比較・検証した研究はありません。かといって、あながち根も葉もない噂とも言えません。最近になって、AGE(終末糖化産物)がシミをつくるという証拠があがってきたからです。

 砂糖や果糖が含まれた甘いもの(ジュースにケーキ、ドーナツなどなど)を食べると、血糖値が急激に上がります。これが余った糖となり、体中をまわるのです。余った糖は、体内のタンパク質と結びつきます(糖化と呼びます)。最終的に、悪名高きAGEになるのです。

 このAGE。シミだけではなく、お肌トラブル全般の原因です。

 AGEがひきおこす問題のひとつが黄ぐすみ。何才になっても明るくきれいなお肌の方はたくさんいらっしゃいますよね。しかし、若いときのお肌とは少し色合いがちがうのではないでしょうか。日焼けしたわけでもないのに、薄茶がかった色合い。その原因がAGEなのです。化粧品会社では、この黄ぐすみを解決しようと、糖化の研究をしているほどです。

写真<左:通常のコラーゲン 右:糖に漬け糖化させたコラーゲン>

 AGEがひきおこす第二のお肌トラブルは炎症です。

 ロレアルリサーチ&イノベーション社の調査によると、「見た目年齢の8割は紫外線が影響する(1)」のだそうです。紫外線が炎症をひきおこし、シミやシワをつくります。また炎症により細胞の成長が止まります。お肌細胞(ケラチノサイトや繊維芽細胞)をシャーレ―の上で培養し紫外線を照射すると、細胞分裂が抑制されます。

 厄介なことに、AGEは紫外線の光毒性を増幅させます。アリゾナ大学の研究を紹介しましょう。彼らはお肌細胞を培養し、紫外線をあてたものと、紫外線に加えAGEを添加したものを比較しました。通常の成長率を「100」だとすると、紫外線を照射した群は「70」になりました。それが、紫外線とAGEをあわせると、わずか「20」だったのです(2)

 これでは。肌の新陳代謝も止まってしまい、お肌の老けこみは止まりません。AGEの管理は、炎症を抑え、新陳代謝を高めるために不可欠だと分かります。



 第三の問題が、「甘いもの」と「シミ」をつなげる「AGEじみ」です。

 AGEは紫外線と合わさることにより、悪影響を与えることは知られていました。しかし、AGE単体での影響は調べられていませんでした。そこで、モリンダ社は「AGEだけでも、肌に悪影響を与える」と仮説をたて、メラノーマ細胞によるメラニン生成を調査したのです。

 メラニン細胞からメラニンを作り出すには、刺激が必要です。細胞実験ではメラニン刺激ホルモン(MSH-α)を添加することで、メラニンを作り出します。人間にあてはめるなら、シミができたことに相当します。現実の世界では、炎症も刺激となります。AGEが刺激となりシミをつくっても、おかしくはありません。

 そこで、メラノーマ細胞にAGEを添加してみました。予想通り、AGEによりメラニンが作られたのです(3)。AGEがしみを作ることから、「AGEじみ」と命名されました。「AGEじみ」こそが、「甘いもの好きにはシミが多い」の重要容疑者だったのです。

左 通常のメラニン細胞 右 AGEを添加したメラニン細胞

 しかし、「美容のためにドーナツは食べられない」と嘆く必要はありません。AGEじみは、生活習慣で予防することができます。

 余った糖を作らせないように、血糖コントロールをすることがひとつ。食前に野菜をとること、食後に軽く動くこと(皿洗い程度でも血糖値は下がるのです)、砂糖や果糖が多く含まれる加工食品を控えることで、体内のAGE生成を抑えることができます。

低AGE食もおすすめです。揚げ物やバーベキューは、高温で調理されることから、AGEが多く含まれます。煮物、蒸し料理は比較的低温です(詳細はexAGEのページをご覧ください)。食事を低AGEにすることで、AGEじみリスクは小さくなります。

最近では、抗AGEをもつ機能性原料の研究も進んできました。生活習慣の改善に加え、そういった抗AGE機能性食品や抗AGE化粧品の力も借りられるようになりました。

参考資料
1 Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013; 6: 221–232.
2 J Invest Dermatol. 2002 Aug;119(2):489-98.
3 Glycative stress researchVolume.3(4):229-235